PEEK
特長 | 注意点 |
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単位 |
ASTM 試験方法 |
ポリエーテルエーテルケトン |
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透明性 |
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― |
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比重 |
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D792 |
1.3 |
引張強さ | MPa |
D638 |
71~103 |
破断時伸び | % |
D638 |
30~150 |
引張弾性率 | MPa |
D638 |
― |
圧縮強さ | MPa |
D695 |
125 |
曲げ強さ | MPa |
D790 |
110 |
衝撃強さ アイゾットノッチ | J/m |
D256 |
85 |
硬さ ロックウェル |
|
D785 |
― |
硬さ ショア |
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D2583 |
― |
線膨張率 | ×10-5/℃ |
D696 |
4~4.7(<150℃) |
荷重撓み温度1.81MPa | ℃ |
D648 |
160 |
耐熱温度(連続) | ℃ |
-50~250 |
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体積抵抗率 | Ω・cm |
D257 |
― |
絶縁破壊強さ | kV/mm |
D149 |
― |
誘電率 | 106Hz |
D150 |
― |
耐アーク性 | sec |
D495 |
― |
吸水率(24h) | 重量% |
D570 |
0.10~0.14 |
燃焼性 | mm/min |
D635 |
― |
耐酸・耐アルカリ性 |
|
D543 |
― |
耐溶剤性 |
|
D543 |
― |
【引用資料】「プラスチック読本」(2014)プラスチックス・エージ発行
- サイクロン掃除機にPEEKが使われているそうですが本当ですか?
- PEEK樹脂の持つ機械的強度・強靭性・成形性を活かして、英ダイソン社のサイクロン型掃除機のインペラー部分にPEEKが採用されています。また、耐クリープ性・耐磨耗性・高い機械強度を持つことから携帯電話のヒンジとスライドガイドレールに使われたりしています。
- PEEKは米国で開発されたものですか?
- 芳香族ポリエーテルケトンの先駆けとなったPEEKは1978年に英国ICI(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ)社が開発し、1980年に工業化しました。電線の絶縁被膜や自動車用オイルシールリングでの利用から、その高い耐熱性や加工性・機械的特性の良さから用途を拡大して現在に至っています。
- 原子力研究施設でもPEEKが使用されているそうですね。
- 独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が東海研究開発センター(茨城県東海村)に建設したJ-PARC(ジェイ-パーク:大強度陽子加速器施設)では、厳しい耐放射線性が必要とされる個所がありますが、この要求をみたす大線量に耐えることが実証されたケーブルはこれまで実用化された例はありませんでした。放射線下ではケーブル被覆の硬化、割れが発生する可能性があり、このことが原因で起こる絶縁不良が心配されていました。そこで耐放射線性の高いPEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)を絶縁材に使用することによりJ-PARC加速器に適用できるケーブルの開発を可能にしました。PEEKをコーティングしたこのケーブルは施設運転期間中、機器類の残留放射線からの放射能被爆が予測される為、保守作業の被曝低減の観点から可能な限り交換不要であることが要求されるのですが、取り替えることなく使用できることが期待されているそうです。
- 耐放射線性はどのような分野で生かされているのですか?
- オゾン層による保護のない宇宙空間や上空を飛び交う航空機では、ガンマ線などの放射線に対する耐久性を必要としています。PEEK樹脂は優れた耐ガンマ線性を有している樹脂として、様々な用途で採用され、これからもさらなる導入が期待されています。
- PEEKは高価なイメージがあるのですが、コストダウンは期待できないのですか?
- 1967年設立のインドの農薬メーカー、Gharda Chemicals Limited は2001年にPEEKの製造を始めました。4年後にはPEEKではVictrex社に次いで世界2位の生産量を誇るまでに成長と遂げました。PEEKの生みの親、英国ICI(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ)社と現在のVictrex社のPEEKの製法が、2種類のモノマーを340℃で反応させるのに対して、印・英米で製法特許をもつGharda社の製法は1種類のモノマーを低温で反応させるもので、副生物も水と少量のナトリウム、カリウムだけで、環境に優しく、低コストであることが特長です。その後、ベルギーのソルベー社がGhardaからポリマー部門を買収したことによりPEEKのコストダウンに更なる期待がよせられています。